脳のはなし

アルコール性脂肪性疾患は日本食が有効

脂肪肝とは、肝臓の細胞に3割以上の脂肪が溜まった状態のことです。脂肪肝には、アルコール性脂肪肝と、アルコールを飲まない人に起こる非アルコール性脂肪性肝疾患があります。

非アルコール性脂肪性肝疾患は、アルコール以外のストレスや運動不足など、様々な生活習慣が原因と言われています。けれども、非アルコール性脂肪性肝疾患の初期はほとんど症状がなく、放置すれば知らない間に肝硬変や肝がんなどにも進行することがあります。また、認知症発症リスクとも関連していて、2022年に発表されたスウェーデンのカロリンスカ研究所の研究発表によると、非アルコール性脂肪性肝疾患の人は、そうでない人と比べ認知症リスクが38%高いことが報告されています。

これまで非アルコール性脂肪性肝疾患の食事療法には、有効な方法がないと言われてきました。2023年に大阪公立大学大学院生活科学研究科の松本佳也准教授と、医学研究科の藤井英樹講師らの研究グループが、アルコール性脂肪肝疾患を改善するには日本食が有効であることを、国際学術誌『Nutrients』で発表しました。

この研究は、非アルコール性脂肪性肝疾患で通院中の平均年齢60歳の男女136人を対象に食事と、筋肉量、肝線維化進度(肝疾患の状態が悪化する速度)の関連性を調べたものです。

この研究の日本食スコア※の食品は、ごはん、味噌汁、漬物、大豆製品、緑黄色野菜、果物、魚介類、きのこ類、海藻類、緑茶、コーヒー、牛・豚肉の12食品・食品群の日本食パターンを数値化したものです。

図)日本食スコア、構成食品・食品群と肝繊維化進展リスクとの関連

研究の結果、12の食品・食品群の摂取量から計算される日本食スコアの高いグループはそうでないグループに比べて、肝線維化進度が抑えられることがわかりました。また、中でも大豆製品、魚介類、海藻類それぞれの摂取量が多いことも肝線維化進度の抑制に関与していることが明らかになりました。さらに、大豆製品の摂取量は筋肉量に関係しており、筋肉量が多いことは肝線維化進度を抑制する可能性が高いという結果でした。これらの研究結果から、「日本食」が非アルコール性脂肪性肝疾患の治療に有効である可能性が高いということです。

お酒を飲まないのに肝臓の数値が悪いという人は、将来の肝硬変、肝臓がん、認知症を予防するために、今回の研究を参考に食事を見直してみてはいかがでしょう。

※コーヒー、牛・豚肉以外の食品・食品群は、男女別の中央値以上であれば1点とし、それ以下であれば0点とします。コーヒー、牛・豚肉の摂取量の中央値未満であれば1点とします。スコアは0点から12点で、スコアが高いほど日本食パターンに準じた食事を摂っているということです。

出典)大阪公立大学大学院生活科学研究科(PDF)
https://www.mdpi.com/2072-6643/15/5/1175
カロリンスカ研究所

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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