脳のはなし

食物繊維が認知症を抑制する!?

65歳以上で最も多い認知症といわれる「アルツハイマー型認知症」は、脳細胞が徐々に減少し、脳が萎縮する病気です。脳に蓄積した異常なたんぱく質「アミロイドベータ」が悪影響を及ぼすことは分かってはいますが、その原因はいまだはっきりとは解明されておらず、世界中で研究が進められています。

そんななか、昨今、「食物繊維がアルツハイマー型認知症の進行を抑制する」ことを示唆する研究が発表されました。

オーストラリアのモナシュ大学が行ったマウスによる実験によると、「短鎖脂肪酸」の産生量が多くなる食物繊維豊富なエサを与えると、認知機能低下を遅らせることができると判明したのです。逆に、繊維が欠如したエサを与えられたマウスは、認知機能低下を加速させ、海馬の神経細胞の新生が阻害されることも分かりました。

「短鎖脂肪酸」とは、大腸で腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵することによってつくられる有機酸のこと。腸上皮細胞のエネルギー源になったり、肝臓や腎臓内でエネルギー源や脂肪を合成する材料になったり、免疫反応のコントロールや抗炎症作用などに関わるなど、重要な働きを担っている物質です。

そして今回の研究においては、認知機能に対しても重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。特に、水溶性食物繊維が短鎖脂肪酸の生成に関わっているといわれています。

水溶性食物繊維を多く含む食品は、大麦や押し麦、オートミールなどの穀物や、カボチャや大根、ピーマンなどの野菜、納豆や大豆などの豆類に豊富です。これらの食品をたっぷりとれる食事で、認知症を予防していきましょう。

参考:https://www.jneurosci.org/content/early/2023/08/11/JNEUROSCI.0724-23.2023

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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