脳のはなし

ヨガは認知症を予防する理想的な身体活動

アルツハイマー型認知症や記憶力低下の危険因子を持つ高齢女性がクンダリーニ・ヨガに取り組むと、記憶力に関連する脳領域が活発になることが、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校セメル神経科学・人間行動研究所の研究グループによって、2023年に『Journal of Alzheimer's Diet』(オンライン版)明らかにされました。

この研究は、記憶力低下がある60歳以上の女性22人を対象に、呼吸や瞑想、心の視覚化に焦点を当てたクンダリーニ・ヨガトレーニングに取り組むグループと、記憶力強化トレーニング(MET)に取り組むグループに分け、60分間の対面トレーニングを12週間にわたり実施したもの。脳活動を調べるfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使い、記憶力に関連していると言われる脳の海馬の領域を詳しく調べました。

脳の海馬は、記憶や瞑想、学習に関わる脳の領域で、神経細胞の結合をつくる役割を果たしていると言われ、短期記憶から長期記憶へと情報をつなげる中期記憶を担う器官。日常の出来事や学習など記憶したことは、海馬で整理整頓してから大脳皮質へ転送され固定化されるなど、記憶を仕分ける脳の司令塔の役割と言われています。

研究の結果、クンダリーニ・ヨガに取り組んだ女性は、海馬の記憶力の関連する領域の活動や接続性が活発になっていることがわかりました。一方、記憶力強化トレーニングに参加した女性は、記憶の固定化に関わる海馬の領域の感覚統合が活発になっていることが明らかになりました。これらの結果から、海馬の接続性と記憶に対する、タンダリーニ・ヨガとMETの両方の有益な効果があるということです。

体の動きや呼吸や瞑想に焦点をあてたタイプの穏やかなヨガであれば、身体的な制限のある高齢者でも、安全に取り組めます。短い時間でも毎日取り組むことで、記憶力を高める効果が期待できるのではないかということです。

ただ、研究グループは今回の研究が小規模だったため、将来的にはプラセボ群などを用いた大規模な研究が必要であるとも述べています。

出典:カリフォルニア大学ロサンゼルス校セメル神経科学・人間行動研究所

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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