脳のはなし

幼児期のストレスが精神疾患の種になる

過度なストレス状態が長期にわたって続くと、多くの人は無気力や不安といった感情に支配されてしまいます。それが高じて、うつ病やパニック障害に陥ってしまうケースも少なくありません。

そうしたストレスによる悪影響は、成人だけに限らず、赤ちゃんにとっても同じように現れるようです。

アメリカ・ウィスコンシン大学が行ったラットを対象とする研究によると、新生児期にストレスを受けた子ラットは、精神疾患になりやすい脳になることが分かりました。

人の脳の遺伝子の17%を占めているといわれる遺伝子要素「Line1」は、その数を異常増加させたときにうつ病や統合失調症、双極性障害のリスクを高めると考えられています。そして、本研究では、生後間もない子ラットに捕食者の臭いを感知させるストレスに曝露させたところ、このLine1が優位に増加することが確認されました。

そして同時に、本研究では高レベルの世話(毛づくろいやなめること)をする母親ラットの子どものLine1レベルは低く抑えられることも確認されました。

つまり、人生の初期の段階においては、ストレスに対しても、愛情あるケアに対しても、同じく脳の遺伝子は反応を示すことが分かったのです。

人の脳においても、ストレスとケア、どちらが脳にとってポジティブな影響を受けるのかは明らかでしょう。人生の初期に限らず、すべての年代において、ストレスは適度に受け流しつつ、こまめに自分自身をケアしていくことが、脳と心を健全に保つことは間違いなさそうです。

参考:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006899320304819?via%3Dihub

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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