脳のはなし

魚が子どもの神経発達遅延リスクを軽減する

昨今、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)を含む発達障害のある子どもの割合が、過去数十年にわたり増加傾向にあることが問題視されるようになりました。

文部科学省が行った調査によれば、「知的発達に遅れはないものの学習面または行動面において著しい困難を示す」小・中学生の割合は、2012年の調査結果と比べて、2022年の調査では2.3%増の8.8%となったことがわかっています。

子どもの神経発達障害は、理解力や注意力、言語能力やコミュニケーションの遅れ、感情コントロールや運動能力にも影響が現れます。子どもを持つ親としては、センシティブかつ、深刻な心配事といえるでしょう。

そして昨今、この心配な子どもの神経発達に対して、魚食が大きく影響していることを示す研究が発表されました。

アメリカ・ペンシルバニア州立大学が行った研究によると、誕生から生後18カ月までの子ども142人を調査したところ、少なくとも週に一回、魚を食べた子どもは神経発達が遅れるリスクが優位に低下することを確認しました。

これまで、一部の神経発達状態は遺伝子が影響すると指摘されてきましたが、今回の研究によって、環境要因も子どもの神経発達に影響している可能性があることがわかったわけです。
さらに、この魚の摂取による神経発達の保護効果は、子どもの『マイクロバイオーム(腸内や体の表面などヒトの体に共生する微生物の総体)』の多様性によって、さらに強化されることも確認されました。
つまり、多種多様な腸内細菌を体内にもっている子どもほど、魚が持つ神経発達サポート効果が現れやすい、ということです。

四方を海に囲まれた日本に住む我々にとっては、明るいニュースといえそうです。魚を中心に、腸内細菌を育てる味噌や納豆などの発酵食品と、腸内細菌の餌になる食物繊維たっぷりの野菜や海藻を並べる…そんな日本ならではの和の食卓が、子どもの神経発達を健全に育ててくれることでしょう。

参考) https://www.mdpi.com/2076-2607/11/8/2111

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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