脳のはなし

”時間制限食”が記憶力を向上させる!?

新しいアルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ」が、国内で初めて保険適用されたことが話題です。脳内にたまる原因物質であるアミロイドβを脳から乗り除くことで、軽度の認知症患者の症状の進行をおよそ7.5カ月遅らせる効果があるといわれています。

「最もなりたくない病気」ともいわれる認知症に対して、治療効果がある薬の誕生はとても心強いもの。とはいえ、認知症は本格的な発症前の予防によって、大きくそのリスクを減らすことができるということも、忘れてはならないポイントです。

その一つが、「食事時間の制限」である可能性を示唆する研究が、昨今、発表されました。アメリカ・カリフォルニア大学が行った研究によれば、アルツハイマー病を発症させたマウスに対して、6時間給餌し、18時間絶食するという時間制限食を行い、その行動や海馬の変化を観察したところ、脳内のアミロイドβ沈着の減少や記憶の改善が起こることが確認されたのです。さらに、アルツハイマー型認知症患者に顕著に表れる、睡眠の乱れが改善されることもわかりました。

本研究ではカロリー制限は特にされていないこともポイントです。あくまで時間制限であり、6時間の給餌の間は特に接種する餌の量は制限されていませんでした。

肥満が認知症のリスクを高めることは広く知られており、とくにアルツハイマー型認知症のリスクへの影響が強いといわれています。また、食べすぎによる血糖値の乱高下が、脳内の血管を損傷して血管性認知症の引き金にもなります。

特におなかが空いていなくても、ダラダラと常に何かしら口にする習慣がつきやすい現代社会においては、私たちは意識的に絶食の時間を設けることが、認知症予防においては重要なファクターであるといえそうです。

参考) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413123002735?via%3Dihub

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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