脳のはなし

孤立の種類で認知機能低下と死亡の関連が変わる!?

認知機能低下や認知症は、将来の死亡リスクを高める要因として知られています。この関係性に影響を与える要因として、性別、人種、認知症のタイプ等が報告されていますが、「孤立」がこの関係性に影響を及ぼすかについては明らかになっていませんでした。

2023年に東京都健康長寿医療センター研究所の村山洋史研究副部長らのグループが、孤立(世帯構成と社会的ネットワーク)が認知機能低下と死亡の関連にどう影響するかについて、『Journal of Gerontology Series B: Psychological Sciences & Social Sciences』誌で発表しました。

この研究は、東京都に居住する介護保険認定を受けていない65歳以上者78,872人を対象に調査したもの。認知機能低下は、10項目の認知症チェックリストで測定し、死亡については、区の協力のもと5年間の死亡情報から調べました。

この研究での孤立については、「世帯構成(ひとり暮らしか否か)」「社会的ネットワーク(他者との交流頻度)」「社会参加活動(地域活動等への参加状況)」の3つを取り上げ、調査しました。

その結果、認知機能の低下は、死亡リスクを1.37倍上昇させることがわかりました。またさらに詳しい分析の結果、他者との交流頻度が少ない人は多い人に比べて、認知機能低下が死亡リスクに与える影響が1.60倍と強い傾向にあることが明らかになりました。
ただ、今回の研究では、世帯構成別に見ると、ひとり暮らしの人(1.13倍)のほうが、誰かと暮らしている人(1.43倍)よりも死亡リスクに与える影響が弱いことがわかりました。

グラフ)認知機能低下が総死亡に与える影響の大きさ

「ひとり暮らし」と「希薄なつながり」は、「孤立」の指標として用いられることが多いものの、その影響は正反対だったことから、必ずしもひとり暮らし=孤立というわけでなく、孤立の種類によって死亡リスクの影響は異なるようです。今後の研究では、孤立の種類をさらに把握し、調査する必要があると述べています。

出典) 東京都健康長寿医療センター研究所(PDF)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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