脳のはなし

中年期のメタボが認知機能の低下を招く原因に

アメリカのワシントン大学医学部マリンクロット放射線医学研究所の研究グループが、中年期の内臓脂肪の蓄積が認知症と関連していることを、2023年に、北米放射線学会(RSNA)で発表しました。

この研究は、認知機能が40〜60歳(BMI平均32の肥満傾向にある)54人を対象に行われたもの。参加者の血糖値やインスリン値などを検査し、腹部の内臓脂肪と皮下脂肪の体積をMRIで測定。さらにPET(脳MRI)でアルツハイマー型認知症の影響が現れやすい脳領域の皮質の厚さを検査しました。

その結果、内臓脂肪が多い人ほど、脳の楔前部(けつぜんぶ)の皮質でアルツハイマー型認知症の初期段階に似た変化が現れることがわかりました。楔前部とは、アルツハイマー型認知症の進行初期に脳の病理学的変化であるアミロイドβの蓄積が生じる脳の領域です。

また、内臓脂肪の量が多い人ほど、脳内の炎症が増えやすいこと傾向にあることが明らかになりました。内臓脂肪が多い人の脳の異常な変化は、平均50歳からすでにはじまっていて、早期から認知機能が低下しやすい可能性があるそうです。

ただし、中年期の内臓脂肪量を減らすことができれば、将来のアルツハイマー型認知症の発症を予防できる可能性があります。中年期は基礎代謝の低下に加えて、不規則な食生活や運動不足などによって内臓脂肪が増加傾向にあるので、内臓脂肪が増えすぎないような生活習慣を心がけましょう。

出典) 北米放射線学会(RSNA)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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