脳のはなし

アルツハイマー型認知症の超音波治療の可能性

日本国内の要介護になった原因のナンバーワンは「認知症」。要介護の約2割を占めているといわれています。認知症は年々増加傾向にあり、特にアルツハイマー型認知症の増加が目立っています。

アルツハイマー型認知症は、脳の中にタンパク質の一種である「アミロイドβ」が滞留することが原因といわれています。昨今、このアミロイドβが脳に溜まる原因が、脳内の血管の劣化にあることが分かってきました。

本来、健常者の脳内にもアミロイドβは出現していますが、血管を通じて脳の外へ排泄されています。ところが、血管が固くなったり、一部欠損したりすることで、アミロイドβの排泄がうまくいかなくなり、脳内に滞留してアルツハイマー型認知症が発症する…というわけです。

この脳内の血管に特殊な超音波を当て、血管の細胞を刺激することで血管の障害を修復するという、新しい治療法が現在、実用化へ向けて研究が進められています。

東北大学大学院の研究グループは、早期アルツハイマー病の患者に超音波治療を3か月おきに1年半行ったところ、認知機能の悪化が抑えられる傾向が確認されたことを発表。 同治療は、臨床試験前にマウスの実験によって、脳内のアミロイドβが減少したことも確認されています。

現在、厚生労働省の認可を目指して、最終治験に入っているとのこと。外科的な措置も、薬のような副作用もほぼない超音波治療が実用化されれば、高齢者にとっては安心して受けられるものになりそうです。

参考) https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/09/press20220916-03-alzheimer.html

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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