脳のはなし

肥満の人ほど大脳皮質が薄くなり、脳の老化が加速しやすい

中年期から初老期にかけて、過体重もしくは肥満でウエスト周囲径が大きい人ほど、大脳皮質(白灰質)の厚さが薄くなる傾向があり、脳の老化を早める可能性があることが明らかになりました。

この研究は、2019年にマイアミ大学医学部の研究チームが、平均年齢64歳の男女約1300人を対象に、肥満度を表す指数BMIとウエスト周囲径などを測定し、平均で約6年後にMRI検査で脳の大脳皮質の厚さと脳容積の関連を調べたものです。

参加者は1/4がBMI30以上の肥満グループで、約半数が25〜30の過体重グループ、残の1/4が25以下の標準体重グループです。ウエスト周囲径は、肥満グループが104.1㎝、過体重のグループが91.4㎝、標準グループが83.8㎝でした。

健康な人でも加齢に伴い大脳皮質は10年あたり0.01~0.1㎜程度薄くなります。

今回の検査結果では、ウエスト周囲径が大きく、BMIが1単位上昇するごとに肥満のグループは大脳皮質が役0.2㎜ずつ、過体重のグループは約0.1㎜ずつ薄くなっていました。また、弱い関連ではありますがBMIとウエスト周囲径は脳の萎縮と関連していると報告されています。

特にこれらの関連が65歳未満の人に強く見られたことから、中年期から初老期の体重は、その後の大脳皮質の薄さに大きく影響すると報告されています。

もちろん、大脳皮質が薄くなったからといって、認知症になるというわけではありません。大脳皮質は記憶や思考などの重要な役割を果たす部位なので、将来的に認知機能の低下に影響する可能性があるのではないかと述べられています。

加齢に伴い代謝が落ちると体重が落ちにくくなります。中高年以降は、BMIやお腹周りを気にして食習慣のコントロールが大切になりそうです。

※体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で計算

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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