脳のはなし

女性の認知症リスクと女性ホルモンの役割

女性は男性に比べ、脳の加齢速度がゆるやかだと言われています。その要因としてあげられるのが、女性ホルモンのエストロゲン。月経から排卵期間に分泌されていて、骨や血管を丈夫にするだけでなく、脳の神経を修復するなど脳の健康を保つ働きがあると考えられています。

これを裏づける女性ホルモンと認知症リスクについて、2019年にアメリカのカイザー・パーマネンテ研究部門のチームが学会誌『Neurology』で発表されました。

この研究は1996 年に登録されていた女性1万5754人を対象にエストロゲン曝露期間(分泌期間)と認知症のリスクについて調べたものです。
対象となった女性は、平均年齢約51歳。その時点での初経年齢と閉経年齢、子宮摘出術の有無について尋ね、妊娠可能な期間を算出した結果と、認知症の病歴は1996〜2017年までの診断記録から分析しました。
女性の初経年齢は平均13歳、閉経年齢が47歳、生殖年齢の平均は32歳。追跡期間中に対象女性の42%が、認知症と診断されました。

研究の結果、初経年齢が平均で13歳だった女性に比べ、16歳以降だった女性では23%も認知症発症リスクが高いことがわかりました。同じく閉経が47.4歳未満だった女性は、それ以降の女性と比べて認知症リスクが19%も高いことも明らかになるなど、エストロゲンの曝露期間が短い人ほど、認知症リスクが高くなる可能性があることが報告されています。

ただ、エストロゲンの曝露期間が短いからと言って、必ずしも認知症を発症するというわけではありません。けれど閉経後のエストロゲンの急激な減少が、数十年後の女性の認知症リスクに何らかの影響を与えている可能性があるようです。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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