脳のはなし

歩きやすい地域ほど認知症発症リスクが減少

有酸素運動は、認知症の予防効果が高いと注目されています。中でもウォーキングは手軽に始められるため、運動習慣として取り入れている人も多いのではないでしょうか。

そんなウォーキングに関わる歩道の設置と認知症の研究が、2021年に東京医科歯科大学国際健康推進医学分野の谷友香子氏らの研究グループによって、医学誌『American Journal of Epidemiology』で発表されました。

この研究は、65歳以上の高齢者約7万6000人を3年間追跡し、それぞれの居住地の近隣の歩道面積と認知症の関連を分析。さらに歩道の果たす役割は、都会と田舎など住居地域で違うことからそれぞれの認知症との関連も調べました。

居住地近隣の歩道面積割合と認知症リスク関連図

出典)東京医科歯科大学国際健康推進医学分野

その結果、歩道面積割合が低い地域に住む人に比べ、歩道面積割合の高い地域に住む人の認知症リスクが45%も低いことが明らかになりました。また、居住地域の都市別の都会と田舎の比較では、認知症リスク減少と歩道の関係は都会のみに見られたと報告されています。

つまり、都会では、居心地がよく歩きたくなるようなウォーカブルな街に住む人ほど、認知症発症リスクが低くなる可能性があるということです。
歩道の整備は、ウォーキングをする上で重要な環境資源なのですが、日本は先進国の中でも歩道の設置割合が少ないことがわかっています。

認知症予防のために、これからの日本の都市の街づくりは、歩道の設置などウォーカブルな整備が重要になるのではないでしょうか。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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