脳のはなし

「厄介で面倒なこと」がより複雑で高機能な脳をつくる

認知症の初期症状の一つに「なにもかも面倒になる」というのがあります。外出するのも、お風呂に入るのも面倒になって、どんどんだらしなくなって自宅にこもるようになってしまう。それは、脳の認知機能の衰えが原因といわれています。

逆に言えば、厄介で面倒くさいことは、認知機能を高めて脳を鍛える効果があるということ。私が行った研究では、何も刺激のないケージで育てたネズミと、迷路や運動機能などたくさんの刺激のあるケージで育てたネズミの脳を調べたところ、刺激のある環境のネズミのほうが、脳の体積が増えることが分かりました。これは、大人になったネズミでも同じことが起こります。

大人になると脳細胞は増えることはなく、減る一方であるとよく言われますが、脳細胞から伸びる神経線維がより太く、より複雑に枝分かれをすることは起こりえます。そのスイッチとなるのが「厄介で面倒なこと」です。逆に、毎日が同じルーティンの繰り返しになれば、脳は衰えるばかりということです。

現代はより効率がよく手間暇がかからないことが求められがちですが、脳にとってはよい選択とはいえません。簡単な手段や方法では、脳はサボり続けてしまうからです。

  • 学習をするときは動画の教材を眺めるより、紙と鉛筆で自学する。
  • 掃除ロボットを使うよりは、ほうきと雑巾で掃除する。
  • デリバリーやコンビニの総菜より、自分で料理をする。
  • エレベーターではなく、階段を使う。
  • タクシーより、電車とバスを使う。
  • テレビやインターネットよりも、書籍で情報を得る。

高次な働きをする脳を保つためには、日々、「面倒なほうを選ぶ」という選択の積み重ねが重要であることを忘れないでください。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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