脳のはなし

「抽象化思考」を起動する脳のスイッチとは?

昨今のビジネスシーンでは、「抽象化思考」の重要性が問われるようになりました。

「抽象化思考」とは、知識の詰め込みだけにとどまらず、得た情報から物事の本質を理解し、そこから考えることができる能力です。
抽象化思考を有する人材は、多様な情報を結び付けて新たなアイデアを生み出したり、大局から理解した判断をしたりできると言われています。そのため、変化の激しい現代社会においては、必要な人材であるといえるでしょう。

最近の研究では、この抽象化思考の鍵を握る脳の領域が明らかにされました。

国際電気通信基礎技術研究所、アルバータ大学、ロンドン大学の共同研究では、この抽象化思考は価値判断に関わる脳領域で行われていることが判明しました。抽象化された情報を使った課題を解くことに「金銭報酬」という人工的な価値を与えたところ、抽象化思考の働きが促進することがわかったのです。また、時間とともに抽象化思考の能力が向上することや、課題をたくさん解けば解くほど抽象化思考を使う傾向が強くなることも明らかになりました。

つまり、価値判断と抽象化思考の働きを行う脳の領域には関連があり、「価値がある」と判断した脳は、抽象化思考の能力を高める可能性があるということです。

本研究で行われた「人工的な価値の付与」は、早く学習するほどに大きい金銭報酬を得られるというものでした。研究者は「学習方法に新たな知見をもたらす」と述べています。

価値づけによって抽象化思考が高まるのであれば、個々が「価値あり」と思えるものを用意することで、抽象化思考を高めることができるとも考えられます。金銭だけでなく、「旅行」「大切な人と過ごす時間」「大好きな趣味」「おいしい食事」など、自分にとって価値あるものを具体的に実現可能な形で用意、イメージしてから仕事に取り組むことで、いつもよりも高い抽象化思考の能力を発揮できるかもしれません。

参考:https://elifesciences.org/articles/68943

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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