脳のはなし

認知症の進行と「ごみ屋敷」の問題

ニュースで目にする機会が増えている高齢者の「ごみ屋敷」問題。この「ごみ屋敷」について東京都健康長寿医療センターの研究グループの追跡調査の報告が注目されています。

これまでも「ごみ屋敷」については、欧米の都市部を中心に様々な論文が発表されていて、そこに住む人は、ディオゲネス症候群、老年期隠遁症候群、などの可能性があると言われています。しかし、どういう人の住まいが、なぜ高齢期になってから「ごみ屋敷」になってしまうのか、そのメカニズムはわかっていませんでした。

東京都健康長寿医療センターの研究グループは、これまで継続して調査していた高齢者困難事例のデータをもとに、ディオゲネス症候群の特徴と長期予後について2021年に国際誌『International Journal of Geriatric Psychiatry』で明らかにしました。

この研究は、高齢者困難事例270人について、Environmental Cleanliness and Clutter Scale(Halliday,2009, Snowdon, 2012)という評価尺度を用いて住環境を評価し、ディオゲネス症候群60人と、非ディオゲネス症候群210人の2つのグループに分けて比較したものです。

その結果、1人暮らしの高齢者の認知症が進行し、身体機能の衰えた時に適切な支援が行われないと、誰もがディオゲネス症候群になる可能性のあることがわかりました。さらにディオゲネス症候群の人は、介入から1年以内の死亡率が高いということも明らかになったのです。

ディオゲネス症候群の支援は、これまで住環境に焦点があてられてきましたが、この研究報告から、高齢者は身体的健康のリスクも高く、身体的健康に早期から十分に配慮した支援方針を考える必要があるようです。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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