脳のはなし

20年後の認知症患者数は減るものの、性別と学歴で発症リスクがアップ

日本は高齢化が進行し、2040年までに認知症患者が1000万人近くになるのではないかと予想されてきました。

東京大学大学院医学系研究科の笠島めぐみ特任研究員と橋本英樹教授、同大学生産技術研究所、高齢社会総合研究機構、未来ビジョン研究センター、スタンフォード大学の研究グループが、20年後の認知症患者が減るという予測を2022 年にイギリスの科学誌『the Lancet Public Health』で発表しました。

この研究は、60歳以上の認知症とフレイル※の有病率、医療介護費について、2043年まで将来推計したもの。戦後の高齢者の健康状態や学歴が年々向上していることや、年齢・性・学歴により疾病罹患状況の個人差が広がっていることを考慮したシステムを開発し、分析しました。

その結果、2016年では認知症患者数が510万人と推計された国の予測とほぼ同じでしたが、2043年にはこれまでの国の予測とは異なり、465万人に減ると推計されました。

しかし、認知症患者数の減少は大卒以上の男性では著しいものの、高卒未満の男性や、学歴によらず女性はむしろ増加する傾向にあるようです。65歳以上の平均余命に占める認知症のある余命割合は、2016年から2043年にかけて男性の大卒以上では変わりがないのに対し、高卒未満22%から25%に悪化すると推計。さらに女性は、学歴に関係なく14%から15%に、高卒未満では23.8%から24.5%に悪化すると推計されています。

さらに、男女格差や学歴格差が広がることに加え、格差を受ける層ではフレイルを合併する可能性が高いことから、濃密な介護ケアが必要となるため、将来的には介護費用額は増加するのではないかとも報告されました。

研究グループは、認知症の治療方法や治療薬の開発だけでなく、学歴格差や男女格差が縮小するような社会政策も重要になってくるのではないかと述べています。

※高齢者に見られる、心身・生活・社会性の機能が複合的に低下し疲れやすく弱っている状態。体重減少、倦怠感。フレイルは、活動力の低下、握力の低下、歩行速度の低下などによって診断されます。

出典)東京大学大学院医学系研究科(PDF)

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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