脳のはなし

幼少期の運動不足が将来の認知症の原因に

子ども時代に、運動などの身体的なパフォーマンスを向上した経験が将来の認知症を予防する可能性があることが、オーストラリアのモナッシュ大学の国立健康老化センターと、メンジーズ大学医学研究所の研究グループによって、2022年に医・科学誌『Journal of Science and Medicine in Sport』で明らかになりました。

この研究は、1985年に7~15歳の約1,244人の男女を対象に、フィットネス(心肺、筋力、筋持久力)と、身体測定(ウエストとヒップ比率)について調べ、さらにその後、2015-2017年(39~50歳)の中年期の脳の処理速度や注意力など認知能力について調査したものです。

その結果、7~15歳の頃に、心肺能力や筋力などフィットネスレベルが高く、ウエストとヒップ比率が低い肥満でなかった子どもは、30年後の中年期の脳の処理速度や注意力などの認知能力を高く維持している傾向にあることがわかりました。
ちなみに、これらの調査結果は、子どもの頃の学力や社会・経済的地位、中年期の喫煙・飲酒の習慣を受けていません。

この結果から、研究グループは、小児期のフィットネスレベルを改善し、肥満のレベルを低下させることが、中年期の認知機能の低下を防ぎ、高齢期の認知症予防リスクを減少させる可能性があるのではないかと述べています。
コロナ禍の影響から、子どもたちは外で遊ぶ機会が減っています。けれども、できるだけ体を動かす習慣や機会を持つことの大切さが浮かび上がりました。

出典)https://www.monash.edu/news/articles/the-real-7-up-the-30-year-study-linking-childhood-obesity-and-fitness-to-midlife-cognition

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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