脳のはなし

新型コロナ感染で「シナプス」が損傷する!?

新型コロナウイルス感染が今だに国内で猛威を振るい、収束が見えない状態が続いています。感染後の短期的な症状だけでなく、中長期にわたって、その後遺症に苦しむ人たちの声が多く聞こえてくるようになりました。

長引く咳や味覚障害、頭痛、難聴などのほか、非常に多く聞かれるのが記憶障害や集中力低下、倦怠感といった症状です。「ブレインフォグ(脳の霧)」とも言われ、新型コロナ後遺症患者の40%がこの症状に苦しんでいるといわれています。

新型コロナウイルスが脳にどんな影響を及ぼすことで、こうしたブレインフォグが発症するのか? それを調べた研究が、昨今発表されました。

スウェーデンのカロリンスカ研究所が行った研究によると、実験室で培養された小型の脳組織「脳オルガノイド」に新型コロナウイルスを感染したところ、脳の神経細胞同士をつなぐ結合部「シナプス」が過剰に刈り込まれることが分かりました。

シナプスは脳の神経細胞同士が情報をやりとりするためのネットワークであり、学習や記憶、感情など、あらゆる脳活動に関わっています。
それが過剰に行われることは明らかに「脳にとって有害であり、記憶の形成や思い出すための能力に支障が出る可能性が高い」と研究者は語っています。

また、オックスフォード大学が行った研究でも、785名の新型コロナ感染前と感染後の脳画像を調査・解析したところ、脳の灰白質や海馬の減少が確認され、全体的な脳のサイズが大幅に縮小していることが分かりました。
灰白質は情報処理や感情コントロール、海馬は記憶と関連が強い脳の部位です。

いずれにしても、感染後は脳に大きな影響があることは間違いなさそうです。感染対策をしっかり行うと同時に、感染後は脳のコンディションを整えることを最優先にしていきましょう。

シナプスも海馬も灰白質も、生活習慣や学習習慣で回復させることは可能です。バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠を確保することはもちろん、読書(できれば音読)や脳トレドリルをしたり、家族とたくさん会話をして、脳を回復させていきましょう。

参考:https://www.nature.com/articles/s41380-022-01786-2
https://www.nature.com/articles/s41586-022-04569-5

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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