脳のはなし

高齢者のライフスタイルが認知機能に影響

中国の大規模調査によって、健康的なライフスタイルをおくることで記憶力の低下を遅らせることが可能だということが、2023年に、学術誌『British・Medical・Journal』で発表されました。

この研究は、平均年齢72歳の正常な認知機能を持つ高齢者2万9,072人を対象に、2009年〜2019年の10年にわたり、6つの健康的なライフスタイルの要因と認知機能について調べたものです。

6つのライフスタイルとは、「健康的な食事」「運動習慣」「活発な社会的な交流」「活発な認知活動」「喫煙習慣がない」「過度な飲酒習慣がない」です。

参加者は、これらのライフスタイルの要素が4~6つあれば健康的な生活スタイルのグループ、2~3つの要素で平均的なグループ、0~1つの要素で健康的な生活スタイルではないグループに分類。さらに認知症の発症リスクが高くなる遺伝子、AEOPのキャリア・非キャリアのグループについても分類し、世界保健機関/カリフォルニア大学ロサンゼルス校聴覚言語学習テストで記憶機能を評価しました。

研究の結果、健康的な生活スタイルをもつ人は、そうでない人に比べ、認知症や軽度の認知障害を発症する可能性が約90%低いことが明らかになりました。さらに、APOE遺伝子をもつ人でも、そのリスクは30%低いことがわかったのです。

研究グループは、今回の研究は観察研究であり、因果関係を特定することはできないものの、健康的な生活スタイルを順守することは、記憶力の低下速度を遅らせることと関連している可能性が高いと述べています。

今回は高齢者向けの調査ですが、研究グループは60歳以下の世代にもライフスタイルが影響している可能性があるため、今後も調査するということです。
長年、身についた生活習慣はなかなか変えることは難しいですが、悪い習慣の心あたりがある人は、今のうちから少しずつ見直すことが認知症予防に役立ちます。

出典:中国国立自然科学基金の主要プロジェクト

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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