脳のはなし

口腔機能低下が認知症リスクを高める!

これまで、歯周病が認知症のリスクを高める可能性があることは様々な研究が報告されてきました。

新たに東北大学歯学研究科の相田潤教授(現・東京医科歯科大学医歯学総合研究科)と木内桜氏らの研究グループは、嚥下や咀嚼の機能低下など、口腔状態が悪化した高齢者の認知機能が低下するリスクが高いということを2021年に医学誌『Journal of Epidemiology』で発表しました。

この研究は、主観的な認知機能の低下がないと答えた65歳以上の高齢者1万3594人を対象に質問紙調査を用い、6年間追跡調査したものです。

口腔状態の悪化の有無と主観的認知機能低下の発生確率グラフ

出典)東北大学大学院歯学研究科

その結果、嚥下機能が低下した人、咀嚼機能が低下した人、口腔乾燥感が現れた人、歯を喪失した人と、そうでない人を比べると主観的認知機能の低下の発生率が高いということがわかりました。中でも嚥下機能の低下した人はそうでない人に比べ、主観的認知機能の低下の発生率が男性で8.8%ポイント、女性では7.7%ポイントと最も高いということが明らかになりました。

年齢や既往歴、喫煙歴、飲酒歴などの要因を考慮しても、高齢者の口腔の健康状態を維持することで、主観的な認知機能低下を防ぐ可能性があるのではないかと報告されています。

2021年の厚生労働省「歯周病罹患の現状と対策について」によると、進行した歯周病を有する者の割合(4㎜以上の歯周ポケットを有するもの)は、1999年から2011年まで、減少傾向にあったにもかかわらず、2016年の調査では増加していました。その傾向は40代、50代、60代以上と年齢を重ねるにつれ顕著であることがわかっています。

歯科検診を受けていない人は、将来の認知症予防のためにも、歯科医院を受診して口腔の健康状態を維持するように心がけましょう。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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