脳のはなし

クリエイティブ脳にする「バイオフィリア効果」

海や山、森林に身を置くと、心身ともにリラックスしたり、自然と深呼吸をしたくなる…。そんな実感は、だれもが持っていることと思います。オフィスやレストランには、たいていの場合、観葉植物や造花がレイアウトされていますが、無機質な室内にいても、私たち人間は少しでも自然を目にしたい、感じていたいと欲していることが分かります。

そんな自然がもたらす人間の心身へのポジティブな効果のことを、アメリカの社会生物学者であるエドワード・ウイルソンは「バイオフィリア仮説」と提唱しました。「人間は自然の中に身を置くことで、メンタルが安定したり、思考力が高まる現象が起こる」と仮定する考えです。

この「仮定」を、VRを使って科学的に分析、研究したのが、ハーバード大学の研究チームです。研究チームは、30人の参加者に仮想現実でシミュレートされた3種類のバイオフィリック(自然共生)にデザインされたオフィスを体験してもらい、その時の血圧、心拍、心拍変動などを測定し、反応時間と創造性を測定する認知テストを実施しました。

結果、自然共生オフィスを経験した参加者は一貫して生理的ストレス指標のレベルが低く、創造性スコアが高くなることが分かったのです。

昨今は、オフィスにたくさんのグリーンを配置したり、森林のアロマを香らせたりする試みも増えてきましたが、これらは気休めではなく、科学的にもストレスの低減や創造性を高める効果があることが分かったということです。

最近は、テレワークも増えてきたので、ストレスを感じたり、クリエイティブなタスクがある日は自然の中にあるカフェやオフィススペースで仕事をするのもよいでしょう。それが難しいときには、イヤホンで海や森の自然音を聴きながらスマホで自然の景色を眺めてから仕事にかかる…というのも、一案です。バイオフィリア効果を楽しみながら取り入れてみてください。

参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ina.12593

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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