脳のはなし

認知症療法に効果的なトラベルセラピー

旅行の観光、社交活動、モビリティの向上など、旅行は刺激的な体験になります。これまでの国内外の研究で、旅行は脳を活性化し、認知機能の低下を防ぐことが証明されてきました。また、旅行に行くことは、気分転換になるだけでなく、ストレスなどメンタルヘルスの問題を抱えている人にとって、多くの面でプラスの影響を及ぼすことが知られています。

中高年男女の旅行の写真 もしくは、夕焼けの旅行の写真

2022年にオーストラリアのエディスコーワン大学の精密医療センターとビジネス ロースクールらの研究グループは、観光が認知症の人にどのように効果をもたらすかを調査した結果を、学術誌『Tourism Management』で発表しました。
この研究は、観光、公衆衛生、マーケティングの専門家からなる様々なチームが、観光が認知症患者にとって、どのような健康上のメリットがあるかを調査したものです。

その結果、旅行は、認知症患者の感情や気分、思考や記憶などの認知、感覚にいたるまで様々な刺激的な体験を与えることが明らかになりました。

特に、研究チームが注目したのは、旅行には医療専門家が推奨する典型的な治療計画に似た経験を提供することです。これは旅行中の運動量が増えることや、新しい経験をすることでの認知機能への刺激、人と食事する時間などが含まれているということです。薬物療法と併用すれば、旅行は現在行われている認知症の非薬物療法の質を高める可能性があることが示唆されました。

研究チームは、認知症やうつ病などの精神状態に対する代替医療介入として評価するには、さらに詳細な調査とデータを収集する必要があるものの、旅行の価値は、単なる休暇というだけでなく、今後は認知症やメンタルヘルスなどに果たす役割が大きくなるのではないかと述べています。

出典:https://www.ecu.edu.au/newsroom/articles/research/travel-therapy-could-holidays-help-mental-health-and-wellbeing

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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