脳のはなし

脳を硬直させる「ネガティビティ・バイアス」に注意!

人から言われてショックだった言葉や深く傷ついた思い出は、誰もがあるもの。何年、何十年たっても忘れられなかったり、それを思い起こさせる場面に出くわすと、昨日のことのように心が痛んだりするものです。
逆に、うれしかった思い出については、ネガティブな思い出と比べると、そこまで後を引くことはありません。

このように、ポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に対してより敏感に、より強く反応してしまうのは「人間の脳の特性である、ネガティビティ・バイアスによるもの」と結論づけのが、シカゴ大学の研究チームでした。

研究によると、参加者たちへ「ポジティブ」「ニュートラル」「ネガティブ」な刺激を与える写真を見せたところ、脳が最も強く反応したのが「ネガティブ」な写真であることが確認されました。
つまり、リスクの高い情報に対して敏感に注意を向け、長く記憶に留めることで、わたしたちヒトは危険から身を守り、生き抜くことができるよう進化してきたというわけです。

現代人にとってはこの脳の特性が、時には生きづらさにつながることもあります。
一度のミスをいつまでも引きずり「みんな自分のことを無能だと思っているに違いない」「自分はまた失敗するはずだ」と、リスタートできなくなってしまったり。
逆に、「あいつは以前に遅刻をして自分を待たせたことがあった。だからろくな奴じゃない」といったかたちで、他者のたった一度のミスが許せなくなったり。
そうしたネガティブな思い込みで、仕事や人間関係がうまくいかなくなることが少なくありません。

ネガティビティ・バイアスに脳を支配されないためには、「自分はネガティブな情報に対して敏感になり過ぎていないか?」「自分が感じていることは事実として確かめたものだろうか」「思い込みで他の情報が見えなくなってはいないか」といった、自問自答が有効です。
さらに、意識的にポジティブな情報に意識を向けることも同時にチャレンジしてみてください。強いネガティブ情報に隠されていた、ポジティブな情報の存在に気が付くようになります。すると、思考が一気に広がりを得ます。

思い込みで人生を閉塞させないためのコツ、脳を硬直させないためのコツとして、今日から2つの思考法を試してみてください。

参考:https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2F0022-3514.75.4.887

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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