脳のはなし

運動習慣が脳の回復力を高める

運動をすることが、脳へ様々なよい影響を与えることは、昨今の研究で明らかになってきました。脳神経の発達を促したり、認知症のリスクを低減するなど、人間らしく生きるために重要な脳機能の成長と保護に、運動が寄与することが分かっています。

そして昨今では、運動を習慣にすることで脳の「認知予備力」の構築を促し、障害が起こったときの回復力を高めることも分かってきました。認知予備力とは、認知機能を低下させる要因(加齢やストレス)の影響を受けても、そこにブレーキをかける能力のことです。

ブラジル・サンパウロ連邦大学が運動と脳に関する147本の論文を分析したところ、小児期から青年期、高齢期にかけての全世代において、運動をすることがストレスや加齢による脳へのネガティブな影響を低く抑えることが分かりました。
特に、人生の初期段階で運動によって認知予備力を蓄積することが、後の認知障害や認知症に対する回復力を高めることも確認されました。

つまり、長期的、定期的に体を動かしている人ほど脳の回復力が高い、ということが分かったのです。

 とはいえ、「今までまったく運動してこなかった…」という人もがっかりすることはありません。研究者は「認知予備力は幼少期の影響を受けるが、人生後期の運動も認知予備力を高める可能性がある」と語っています。
実際に、高齢者が6カ月間の有酸素運動(ウォーキング)を行うことで、脳の体積が増加したことが確認された研究もあります。

遅すぎるということはなく、気が付いたとき、はじめようと思ったときが、人生で一番若い日です。脳の回復力アップのために、何か一つ、運動をはじめてみましょう。

参考):The Contribution of Physical Exercise to Brain Resilience Frontiers in Behavioral Neuroscience

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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