脳のはなし

考え過ぎが“脳の毒”になる科学的な根拠とは?

一日中机に座って作業をしているだけなのに、自宅に帰るとぐったりと疲れ切って動くこともできない……そんな経験は、だれもがあるものです。運動することで体が疲れるのは当たり前に思えますが、なぜ体を動かしていなくても体が疲れ切ってしまうのでしょうか。

そのわけは、「考えすぎて疲弊した脳内には、ある有毒な物質がたまるから」であることが、昨今の研究で明らかになりました。

フランスのサルペトリエール病院パリ脳研究所の研究によれば、集中的な認知作業を行うことで脳内のグルタミン酸濃度が高くなり、それが蓄積することで精神的な疲労を引き起こすことが分かりました。グルタミン酸というと、「うまみ成分」として有名ですが、脳内では脳機能をコントロールするために必要な興奮性の神経伝達物質として働いています。しかし、濃度が高くなりすぎて過剰にあると、脳の神経細胞を阻害する毒性を発揮してしまうのです。

これが、「脳疲労」の正体です。グルタミン酸が過剰になった脳は健全に働けなくなって、判断力や注意力といった認知能力を低下させてしまうことが分かっています。

「疲れて考えがまとまらない」「頭がぼんやりしてきた…」と脳疲労を感じた時には、速やかに休憩をとりましょう。また、十分な睡眠は、脳内のグルタミン酸濃度を下げる効果的な方法であることも分かっています。頭脳労働には適切な休息を必ずセットにすることが、脳を健全に働かせる基本条件であることをお忘れなく。

参考):
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(22)01111-3

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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