脳のはなし

10分間の軽い運動でも高齢者の記憶力がUP

運動には、記憶力など認知機能の維持向上効果があり、これまでも認知症の予防対策としても注目されていました。けれども、どれくらいの強度の運動で高齢者の記憶力が向上することはよくわかっていませんでした。

そんな中、流通経済大学と筑波大学の研究チームが、軽い強度の運動で高齢者の記憶力が向上することを2023年にアメリカの『Neurobiology of Aging』誌で発表しました。

この研究は、健常な66~81歳の高齢者21名を対象に、息が軽く弾む程度の軽い強度の自転車漕ぎを10分間行う運動条件と、運動せずに座った安静条件の2つの条件のあと、記憶力テストを行い、調査したものです。

その結果、軽い強度の自転車漕ぎ運動を10分間行うと、運動せずに座っていた時と比べて記憶力が向上することがわかりました。

また、運動時は安静時に比べて瞳孔が拡大し、瞳孔が拡大するほど記憶力への効果が大きいことが明らかになりました。加齢による「もの忘れ」の原因の1つに海馬を中心とした脳の広範囲の神経活動を調節する覚醒機構の低下が考えられています。瞳孔径の変化はこの覚醒機構活性化を予測する指標となるため、記憶力向上のメカニズムとしてこの脳内覚醒機構が関与する可能性を示唆しています。

これまでの若齢成人を対象とした研究で10分間の軽い強度の運動を行うと脳の海馬を中心としたネットワークが強化され記憶力が向上することが明らかになっていましたが、高齢者も同様の効果が得られる可能性があります。

ウォーキングやペダル漕ぎなど軽い強度の運動を習慣的に行うことで記憶力の向上が期待できるかもしれません。

出典) 流通経済大学 筑波大学
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0197458023002269?via%3Dihub
https://www.u-presscenter.jp/article/post-51687.html

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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