脳のはなし

ノンアル飲料で飲酒量を減らすことに成功

過剰な飲酒は脳の前頭葉、小脳、海馬に影響を及ぼし、中でも前頭前野の萎縮させることがわかっているため、記憶力や認知能力の低下を招く可能性があると言われています。

飲酒は少量であれば体によいとう研究がある一方で、2022年のUKバイオバンクの研究報告によると、日に1単位(アルコール度数5%の500ml缶のビールに換算すると約半分程度)の少量でも脳の灰白質や白質が萎縮するという研究があります。

この研究は、約37,000人を対象に解析されたものです。研究の結果、50歳において飲酒量が1日1単位だと半年分の老化に相当する影響が見られることがわかっています。1単位から2単位に増えると2年、2~3単位だと3年半、3〜4単位は4.9年と脳の老化が進むことが明らかになりました。

少量でも脳に影響することを考えると断酒という方法もありますが、飲酒習慣のある人にとってはなかなか難しいこともありますから、飲酒量を減らすことからはじめてみてはいかがでしょう。

その方法の一つに、アルコールテイスト飲料、いわゆるノンアルコール飲料をアルコールの代用として利用する方法があります。ノンアルコール飲料はスーパーマーケットなどでも売られていて、健康のために利用している人も多いでしょう。
けれども、ノンアルコール飲料が及ぼす飲酒量の影響については、これまで明らかにされていませんでした。

その影響を調査したのが、2023年に『BMC Medicine』誌で発表された筑波大学医学医療系地域総合診療医学の吉本尚准教授らの研究グループによる研究です。
この研究は、20歳以上の成人123人を対象に、12週間にわたって、ノンアルコールを提供するグループと、提供しないグループに分けて調べたもの。

その結果、ノンアルコール飲料を提供したグループの飲酒量は、提供しないグループと比較して調査前よりも大きく減り、その効果は8週間続くことがわかりました。提供したグループの飲酒量は、介⼊前に比べ12週⽬時点で、1⽇あたり純アルコール換算で平均11.5g(アルコール度数5%の500ml缶のビールに換算すると230ml)、減少していたのです。また、ノンアルコール飲料の摂取量増加と、飲酒量減少には相関が見られ、ノンアルコール飲料がアルコール飲料に置き換わった可能性があるということです。

これらの結果から、研究グループは過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、ノンアルコール飲料が有効であり、減酒のきっかけになるのではないかと報告しています。
年末年始のアルコールが増える時期、アルコール摂取量が気になる人は、脳や体の健康のためにノンアルコール飲料を利用してみてはいかがでしょう。

出典)
筑波大学医学医療系地域総合診療医学(PDF)
UKバイオバンク

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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