脳のはなし

「やり抜く脳」をつくる方法

ビジネスパーソンに望まれるスキルのひとつに「達成力」があります。一つの目標に向かって、最後まであきらめずにとりくみ、ゴールをするまであきらめない力です。ビジネス書『GRIT やり抜く力』(アンジェラ・ダックワース:著、ダイヤモンド社:発行)がベストセラーになったことからも、この能力に対する関心の高さがうかがえます。

ビジネスに限らず、学習やスポーツ、健康維持やダイエットなど、一度立てた目標を達成するためには、この「GRIT」は人生のあらゆるところで必須であることは間違いないでしょう。

とはいえ、「わかっているけどなかなか最後までできない…」「どうしても最後までやりぬくことができない」という悩みを持つ人は多いことでしょう。そこで、ここでは脳科学的にこの「達成力」を高める方法を明らかにした、ある研究をご紹介しましょう。

科学技術振興機構と国立精神・神経医療研究センターが2020年4月に発表した共同研究によると「目標の細分化は脳構造の変化を促進し、目標達成を支援する」ことが明らかとなりました。研究では、参加者にパズルを最後までやり抜くことを目標としてもらったところ、やり抜く力が低いと予測された人であっても、目標を細分化し、小さい目標ごとに達成感が得られる学習プログラムを用いると、最後まで達成できることが分かりました。
さらに、この学習プログラムに取り組んだ人は、ほかの学習プログラムに取り組んだ人と比べて、やり抜く力の指標となる脳の「前頭極」の構造に明らかな変化が示されました。

つまり、最終的なゴールだけでなく、その手前に「サブゴール」を複数設定し、ゴールを細分化することで、最後まで「やり抜く脳」に変化する、ということが分かったのです。

 例えば、ひと月後のプレゼンのためにスライドを100枚用意しなくてはいけないとき、スタート初日から「100枚終わらせなくちゃ…」と強く考えては途方にくれてしまい、力も入らなくなってしまいます。「今日は全体のテーマを決めることをゴールにしよう。そのあと3日かけて資料を探して、次の3日で原稿を書いて…」と、やるべきことを細分化すれば、ハードルはグッと低くなり、リラックスして取り組めるようになるでしょう。

大きな目標ほど、サブゴールをたくさん設けて細分化する。それが「やり抜く脳」をつくることにつながります。

参考:
“Plastic frontal pole cortex structure related to individual persistence for goal achievement”(目標達成までの「やり抜く力」に関わる大脳前頭極の可塑性)(PDF)

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