脳のはなし

トランス脂肪酸の上昇が認知症リスクを高める?!

在宅ワークで増えているのが食事のテイクアウト。テイクアウトで人気なものに唐揚げなどの揚げ物、ハンバーガー、ドーナッツやパンケーキなどの洋菓子があります。ただ注意したいのが、これらに含まれているマーガリン、ファストスプレッド、ショートニング。これらにはトランス脂肪酸が多く含まれていることがあるからです。

トランス脂肪酸は脂質の一種で、牛肉や羊肉、乳製品に微量に含まれている天然由来のものと、油脂を加工、精製する過程でできるものがあります。摂りすぎると、生活習慣病の原因になると言われてきました。一方、これまでトランス脂肪酸と認知症の関連は十分に検討されてきませんでした。

九州大学大学院医学研究院の二宮利治教授らが研究代表を務める「久山町研究」※グループは、久山町の認知症ではない高齢者約1600人を10年間追跡した成績を用いて、血清トランス脂肪酸(エライジン酸)と認知症発症の関連について検討しました。

図 血清sTREM2レベル別にみた病型別認知症発症のハザード比

出典)九州大学大学院医学研究院

研究の結果、血清トランス脂肪酸(エライジン酸)濃度が高い人では、低い人に比べ全ての認知症および、アルツハイマー型認知症の発症リスクが約1.6倍も高いことがわかりました。この研究は、2019年に医学誌『Neurology』に発表されました。

ただ本研究ではトランス脂肪酸と認知症発症の因果関係は明らかではなく、トランス脂肪酸を多く摂取する生活環境や習慣などを反映した可能性もあります。このため今後の研究成果を待つ必要があるようです。

2019年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、脂肪エネルギー摂取量の目標量は20〜30%未満です。けれども成人男性の約35%、成人女性の約44%で、脂肪エネルギー比率が目標量を超えていることがわかっています。脂肪エネルギー摂取の比率が高いと、トランス脂肪酸などの摂りすぎにつながる可能性があります。揚げ物や洋菓子などトランス脂肪酸を多く含む食品を食べる機会が増えた人は、注意が必要かもしれません。

※久山町研究とは、福岡県久山町の約8,400人の地域住民を対象に、50年間以上にわたり脳卒中、虚血性心疾患、悪性腫瘍、認知症などの生活習慣病について行われた疫学調査のこと。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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