2021.10.15
人と会わない高齢者ほど、脳の前頭前野と白灰質の容積が小さくなる傾向に
コロナ禍で、社会的孤立が脳や健康に及ぼす影響が懸念されています。コロナ流行後は、同居していない親と会う機会が減ったという人が多いのではないでしょうか。
社会的孤立が認知機能低下や、認知症発症リスクの原因であることは多くの研究で報告されています。最近では、2020年に東京都健康長寿医療センターの村山洋史研究副部長らのグループの社会的孤立と認知機能低下や認知症発症との関連についての研究があります。
この研究は新潟県十日町市の高齢者コホート研究のデータを用い、65歳〜84歳の男女を対象に、社会的孤立とMRIで測定した脳容積の関係について調べたものです。
社会的孤立は、「人と会ったり、一緒に出かけたりすること」「電話、FAX、メールのやりとり」などの接触機会を持つ頻度により、週1回未満、週2回未満、週3回未満、週3回以上の4つに分類しました。
その結果、接触機会が週3回以上の人と比べ、週1回未満は脳の前頭前野と灰白質の容積が小さい傾向にあることから、社会的孤立と認知機能低下や認知症発症が関連している可能性があることが明らかになりました。
また別の研究で、村山洋史研究副部長らのグループは、コロナ流行前と流行後の社会的孤立の変化と精神的健康についても調べていて、社会的孤立者が増えていることを報告しています。
これは、2021年に国際誌『International Journal of Environmental Research and Public Health』で発表されたもの。15〜79歳の約25000人を対象にインターネット調査が行われました。
コロナ流行前の社会的孤立者は21.2%でしたが、流行中は27.9%となり、6.7ポイント増加。年齢、性別に見ると、女性より男性の割合が多く、50代、60代がそれぞれ8.9ポイント、70歳代になると10.5ポイント増加していることがわかリました。
また精神的健康では、「コロナ流行前から変わらず孤立していない者」に比べ、「コロナ流行で孤立した者」は、コロナに対する恐怖感が強い傾向があるという結果に。
ワクチン接種が進みつつありますが、まだコロナ流行前と同じ生活に戻ることは難しい状況です。人との接触機会が減少したことで、人との繋がりが失われている今こそ、社会的孤立者のサポートが大事になってきています。
川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者
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