脳のはなし

楽しみや目的のある活動が認知症を予防

国立がん研究センターなどの多目的コホート研究(JPHC研究)グループが、中年期の男女を対象に、趣味とその後の認知症(介護保険情報から認定した認知症)の発症リスクを調べた結果を2022年に医学誌『Journal of Epidemiology』で発表しました。

これまでも、趣味の活動が認知症のリスクを下げる可能性があるという報告はありました。けれども、対象者が65歳以上の高齢者で追跡期間も短いことから、趣味を持たないと認知症になるのではなく、認知症や認知機能の低下の症状の1つとして、趣味を持つことができない状態になっているのではないかと考えられていたのです。

今回の研究は、40〜69歳の22,377人を対象に1993年から1994年に実施したアンケート調査における「趣味はありますか?」という質問の回答から、対象者を「ない」「ある」「たくさんある」の3つのグループに分けたものです。合わせて2006年から2016年までの介護保険データを用いて、認知症の追跡調査を行いました。追跡調査中に対象者のうち3,095 人が認知症を発症しました。

その結果、趣味がない人と比べて、趣味がある人では18%、趣味がたくさんある人では22%、認知症のリスクが低いことがわかりました。アンケート回答時の年齢層で分けた場合でも、趣味がない人に比べて、趣味がある人では認知症のリスクが低いという結果でした。

さらに今回の研究では、認知症の要因である脳卒中との関連も調べていて、趣味がない人と比べて、趣味がある人・趣味がたくさんある人では、ともに脳卒中の既往がない認知症のリスクが23%低いことも明らかになりました。

研究グループは、「趣味への取り組みを通した知的活動、あるいは身体活動が、アミロイドβの蓄積や炎症反応、灰白質(神経細胞が集まっている脳の領域)の萎縮を抑制したり、高血圧や糖尿病、肥満といった認知症の罹患リスクを低下させたりすることで、認知症の予防につながると考えられます」としています。

出典)国立がん研究センター

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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